(2024.9.24)
先日書かせていただいたように、社長が常に目指しているのは「100年先を見据えた森づくり」です。
山から少しずつ木を伐り出すことで山への負担を減らし、さらに堅固で強い道づくりをすることによって、災害にも強い山を作っていきます。
そのために欠かせないのが特注カスタムの小さな重機です。既存の重機では社長たちが目指す山づくりに限界があるため、超小旋回3tバックホー(オフセットブーム)にブレーカー配管を施した機体をベースに作っていきます。同じ山づくりをしてきた先人たちがたくさんの経験と失敗を積み重ねて、いろいろなカスタム方法を自分たちに伝えてくれました。高性能林業機械や大型のグラップルにも負けない、小さい重機には小さい重機なりの戦い方があるのです。
まずはグラップルです。ふつうは固定式で動かすタイプが多いのですが、こちらは揺動式のグラップルでユーフォーキャッチャーのようにブラブラとしています。構造が単純なので固定式より軽く、機体の後ろに重り(カウンターウエイト)を入れなくてよくなり、動きやすくなります。また掴む木に対しても固定されていない分、向きを気にせずぴったりと掴むことができ、力が逃げません。ただその分、ユーフォーキャッチャーをやるがごとく高い技術力が必要とはなってきます…。
そして道の脇に生えている木をより多く残すために、アームを極力まで折りたためるようにしてあります(超小旋回・オフセットブーム)。本体により近く折りたたむことで、狭い道での作業に活躍してくれます。
この装備だと運転席はキャビンになっていることが多いのですが、狭い作業道のため後方確認などしやすくなるように、三方の壁を無くして視野を広げています。その代わりガードを取り付けることで、真正面に木を引き込むときなど自分に当たらないよう工夫しています。
ウィンチは機体に付けると高額になるだけでなく、機体が重くなり作業効率も非常に悪くなるため、使いたい時に後付けできるようにしました。アームに滑車用のU字を溶接し、高い位置で引き込めるようになっています。
キャリーダンプも標準にはないカスタムをしています。ダンプの役割は作業道開設時に発生した土砂を捨てるのではなく、その土砂(バラス)を勾配修正など必要なところに置いて固めて道を頑丈にし、3tトラックが走れるようにすることです。
そしてバタの開き方は一般的には下が開いて土砂を落とすだけなのですが、支線からトラックが走る本線へ木材を運ぶ事もあるので、タテジを追加し上を開けられるようにすることで、長い木材も積んで運べるようにしました。
今回のカスタムは、ここまで先人たちが残してくれた知恵が詰め込まれた結晶です。そして今後も社長をはじめ、多くの人たちが失敗と成功を重ね、次世代へとこの技術を継承していくことでしょう。
現代社会の象徴とされる「大量生産・大量消費」ですが、これは環境問題を考える視点からすると、まったく正反対なものと言えます。
この社会の在り方に厳しく言及したのが、イギリスのエルントス・フリードリヒ・シューマッハという経済学者です。
彼が唱えるのは「スモールイズビューティフル」。資源は無限には存在せず、いつかは無くなってしまうものなので、必要以上に求めるのではなく、今地球にある資源の中で、本当に人間が必要なものを理解し、永続的な社会を作っていくことが必要だという考え方です。
「大きければ大きいほど良い」という考えを見直し、物事の適正な限度を見極めてそれを上下どちらに超えても無駄になることを理解しなければなりません。
便利で多機能な大きな重機はたくさんありますが、それに多額の費用を投資し、山から木材を短時間で多く伐り出すことは、果たして本当に山のためになっているのでしょうか。
小さい重機、少ない燃料で木を少しずつ伐り出し、今目の前の生産性ではなく、未来に残る山づくりをしたいと社長は考えています。
小さな林業を進めていくための小さな重機の在り方を、先人たちの知恵と工夫を生かしてさらに発展させ、これからも後輩たちにつなげていきたいと思っています。
記:ハヤシ