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南アルプス井川エリアでの狩猟

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(2024.12.28)

※鹿の狩猟の話なので少しショッキングな写真が含まれます。閲覧する際はご注意ください。

今回の狩猟も社長の仕事仲間である井戸さんと一緒に参加してきました。狩猟場所は、井戸さんの知り合いが住んでいる、南アルプスの山に面した井川地域です。

 

井川は大井川の上流に位置しており、今では葵区井川ですがかつては井川村として栄え、「井川メンパ(お弁当箱)」が名産品として知られています。ヒノキの薄い板を丸く曲げて、継ぎ目を山桜の皮でしっかり縫い合わせたあと生漆を塗って仕上げた、とても丈夫なお弁当箱で、静岡県郷土工芸品にも認定されています。そしてこの地には昭和32年に建設された井川ダムがあり、今回の狩猟場所となるのはそこからさらに北上した畑薙第一ダム付近です。この古い伝統と歴史ある井川で今回は狩猟させていただきました。

まず驚いたことに、いつもは狩猟となると大人数なのですが、今回なんと参加できたのは社長を含めて3名とかなり少人数でした。
今回は泊まりだったので、「獲物が獲れないと今日の夕飯は無いぞ」と言われ、社長も一層と気合が入ります。道中で大井神社という狼信仰のある神社があり、そこでご参拝していくことにしました。雪が降り積もる中、狩猟が無事に行えますようにと祈願して先へ進みます。

 

さらに車で南アルプスのほうへ向かっていくと、前を案内してくれていた車が急に止まりました。社長たちも止まり後ろへ付けます。すると前の車から案内の方が出てきてさっそうと脇へ走っていきそのあとすぐ銃声が聞こえました。あっという間に鹿が一頭捕らえられていたのです。目にもとまらぬ速さとはこのことでしょう。社長たちからは全く見えなかった山にいる鹿の影を、その方は運転しながらも瞬時に見つけて素早く捕らえてしまったのです。
やはり長年積んできた経験と知識はレベルが違います。

 

そんなこともありつつ、雪が舞う中いよいよ大井川上流の狩猟ポイントへ着きました。いつもは大人数のため、まだその中では若手の社長は離れたポジションに座ることが多いのですが、今回はなんといっても3名しかいなかったので、とても良いポジションに座らせてもらいました。

まず案内の方が犬を使って鹿を山から川のほうへ下ろしていき、追われた鹿が川沿いを走ってくるのでそこを銃で仕留めるという手順です。この説明を受けた社長は、こんなに広い場所なのに言われた通りに川沿いを走ってくるのかな?と少し半信半疑でした。
持ち場で座って待機していると「井戸さんの方へ行ったぞ」と無線が入り、まもなく遠くから銃声が聞こえ、少し経つと無線で井戸さんから「獲ったよ」との報告が入りました。社長は嬉しさでホッとし、また自分も先輩方に続くよう頑張ろうと気合を入れ直しました。
雪が降り続く寒さの中、じっと待ち続けているとまた無線で「今度はそっちへ行ったぞ!」との連絡が入り、目の前にはまさに説明通り、鹿がまっすぐと川沿いを走ってくるのが見えました。
(これは後で聞いた話ですが、鹿は自分の匂いを消すために川沿いを走るそう。)

 

一発目で鹿が少しよろけましたが倒れず、こちらに気づいた鹿は90度反転し川の中へ逃げ込みました。川を渡っている所へ二発目を撃ちましたが鹿は止まることなく、川から崖上へと登って逃げていきます。そこですかさず社長も持ち場から飛び出して追いかけ、崖を登っている最中の鹿の背をしっかり見つめながら狙いを定め、三発目を撃ちました。するとようやく鹿が崖上から転がりバッシャーンと音を立てて川に落ちていったのです。これが社長自ら捕らえた初めての獲物です。
かなりの大きさなのでどうやって運ぶのかなと思っていると、なんと川を使って運ぶとのことでした。鹿に縄を括り付けて水の浮力で浮かせ、軽トラで引っ張り上げる場所まで水の中を引いて歩きます。

 

はじめの一頭も合わせてこの日はかなり大物の鹿を計3頭も捕らえることができました。

昔の井川地域の狩猟は山小屋に泊まりながら鹿や猪を何日もかけて追っていたそうです。今は増えすぎて獣害と言われる鹿ですが、昔はとても貴重でした。そのため、保存の効く肉の部分は売るために取っておき、腐りやすい内臓や脳みそは猟師さんたちの山でのごちそうになっていました。まだ社長も食べたことはないとのことですが、脳みそは白子みたいな味がするそうです。昔は獲った命をひとつも無駄にすることなく全て食べていたという事に、社長は深く感銘を受けていました。
そして行きの祈願が効いたのか無事に夕飯抜きになることはなく、今回獲った鹿の肉やモツは、鍋とバーベキューでおいしくいただきました。

 

やはり狩猟を通してわかるのはその労働の大変さです。獲って持ち帰るのもそうですが、その解体もまた大変です。社長は小屋をお借りして自分で獲った1頭を全て解体し、お肉と皮と角を持って帰りました。井戸さんの獲った1頭は帰り道にある知り合いの食肉処理を行う解体所へ持っていきました。そこではちょうどシカ肉のソーセジとパテの試作品を作っている所だったのですが、解体所の方は試作品の値段設定にとても悩んでいました。なぜなら鹿の仕入れや美味しい調理をするためには、工程が多く高価になりがちな為、「この商品をこれだけ時間をかけて作って、はたしていくらで買ってもらえるのか」が、難しい問題となっているからです。実際社長が試食させてもらうと本当に美味しくて、加工するとここまで美味しくなるのかと驚いてしまいました。

 

獣害対策として鹿の命を奪ってしまうのですが、ただ奪うのではなく命を有難くいただいていることを皆が理解し、高値でも食べる需要があれば様々な問題が解決します。しかしやはり加工して販売するには人件費や手間が壁となり、なかなかすぐには解決の糸口が見つからないのが現状です。

今後の獣害対策に活かせるよう、これからも狩猟を通してその解決方法を模索していきたいと考えています。

記:ハヤシ

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