(2023.12.6)
今回は猟友会が新人ハンター向けに開催した伊豆市での実猟体験に参加させていただきました。
林業を行っていく中で切っても切り離せないのが、山で暮らす動物たちとの関わりです。社長が狩猟に興味を持ったきっかけは、近年有害駆除によって処分されてしまったシカたちのほとんどが、廃棄されているだけだという現状を知ったからです。 森を支えるためだからといって、森のために犠牲になってもらったその一つ一つの命、本当に廃棄されるだけでいいのだろうか、もっといただいた命を活かすことができないのだろうか…。林業を通じて「地産地消(地元で生産されたものを地元で消費する)」にもつなげていきたいと考えているからこそ、この現実をやはり自分の目で見て知る必要があると感じました。
↓シカの利活用についてはこちらのブログに載せているので良ければご覧ください。
現在の林業においてシカやイノシシはどうしても食害を引き起こす要因となっています。森を育てるために植えた苗木や若い芽が、シカなどによって次々と食べられてしまい植生が回復せず、そのあとの表土はむき出しの状態となってしまいます。そこに雨水が直に当たり土壌が侵食され、そのまま放っておくと大きな土砂災害など、自然災害の引き金になりかねません。
森を守るということは、すべて大きな輪で繋がっているのです。そんな輪の中のひとつである狩猟という分野においても少しずつ学んでいき、またひとつ森を守ることへとつなげていければと思っています。
ひとくくりに「狩猟」といっても種類があります。主に山の狩猟は「わな猟」と「銃猟」です。わたしの直観だと、わな猟のほうがかなり負担も少ないのかなと思ったのですが、それは少し違いました。
わな猟の場合、仕掛けの毎日の見回りはもちろん、獲物がかかっていた場合はすぐに処理をしなければ肉が傷んでしまいます。相手は動物ですので、その獲物が獲りたい時だけ都合よくワナにかかってくれるなんてことはないのです。
その点、銃猟は自分のタイミングで実施することができますが、その銃猟の中にも種類があり、例えば単独忍び猟は動物の行動ルートを見極めてポイントを絞っていく必要があるので、かなりその地域を知り尽くしていなければ、仕留める確率は格段に減ってしまいます。その難しい単独猟者に比べるとグループ猟者のほうが多く、一般的には猟犬を使って勢子が獲物を追い詰め、射手が仕留める「巻き狩り」などがあります。
そしてまたひとつ浮上する問題はハンターの減少と高齢化です。これは日本のあらゆるところで起こっているので、もはやハンターの問題というわけでもありませんが、やはりこれによって人手不足がおきていて駆除できる獲物も減り、食害が増えてしまいます。
そこでハンター人口増加のひとつの手立てとして、報酬を得る事が出来る有害鳥獣駆除があります。もちろん一連の許可申請が必要ですが、狩猟によってお肉を手に入れるだけでなく、獲る行為でお金を得ることができるのです。ただこれによって良い事はもちろん、少し悪い事も出てきてしまいました。様々な問題がある中でも特に多いのが縄張り争いです。わな猟と銃猟は同じ場所で猟が重なるとどちらにも損となるため対立することが多く、そもそも山の所有者さんの許可を得ているのか?という論争にもなってしまいます。
また結局それ以前に昨今の円安などで弾の金額も上がっているので報酬が割に合わないなど、まだまだ課題は山積みのように感じます。
そしてこの問題を自分たちで解決していくには、お互いの気持ちを尊重することが大切になってくるでしょう。もし猟場で先にやっている人がいたら声かけをし、話し合うことが重要です。なぜなら、先に来た人は獲物が獲れるように大事に猟場を温めている可能性があり、そんな中、後から来た人が無言で場を荒らしたとなれば果たしてどうなるか…、怒って争いになるのも無理はありません。しかしそこでいがみ合うのではなく、お互いが話し合い助け合い、同じ地域を支える狩猟者として仲良くしていけたら、人も森も地域ももっともっと良い方向へ向かっていけるのではないでしょうか。
また行政がもっとこの問題への働きかけやルール作りを行い、猟友会や実施隊の組織体制を強化し、補助制度の基盤がさらに構築され、そこで初めてハンター人口の増加を目指すことができるのだと思います。
まだまだこの土台がしっかりしていない段階で「報酬を出すから駆除しましょう」では、森が荒れる一方となってしまうように感じます。
少し大きな課題が見えてしまいましたが、狩猟においても、お互いの狩猟方法をリスペクトして、狩猟を通して守るべきものは何か、全員が同じ目標に向かっていけるようになれば、少しずつかもしれませんがこの問題の解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
記:ハヤシ